Hamarimono

そのときそのときのマイブームなど。

絵本「はじめ小さな草原に」の感想

 終戦記念日の8月15日、気になるニュースを見つけました。

戦争:絵本と詩、注目集める 分かりやすい表現で警鐘
 
 戦争を素朴な言葉でつづった絵本と詩が、注目を集めている。集団的自衛権の行使を認めた安倍政権が関連する法整備を準備し、有事への不安が高まっていることもあり、戦争に向かう空気を分かりやすく表現した作品に関心が広がっているようだ。【金秀蓮】

 ◇絵本「戦争のつくりかた」 有事法制批判、再び脚光

 10年前に生まれた絵本「戦争のつくりかた」(りぼん・ぷろじぇくと著、マガジンハウス刊)は再出版を望む声が高まり、9月にイラストなどを新しくして新装改訂版が出されることが決まった。

 「あなたは戦争がどういうものか、知っていますか?」。そう始まる絵本は四六判47ページ、見開いた右側にイラスト、左側に文章が基本スタイル。

 2004年、国民保護法など有事関連法案の国会審議に危機感を抱いた市民らが、法案を広く伝える活動の中で絵本を制作。西日本在住の会社員が原案を作り、日本各地や海外に住む主婦ら二十数人がメールで意見交換しながら完成させた。インターネットで公開した絵本は口コミで広まり、出版された12万3000部が完売した。(以下略)


 この記事で紹介されている絵本「戦争のつくりかた」を私はまだ読んだことがありませんが、機会があったら読んでみよう....そんな気になりました。



戦争のつくりかた

戦争のつくりかた



 と、同時に、「どうして争いが起こるんだろう」「どうして仲良くできないんだろう」という疑問に対する思いを深めてくれた絵本、よどがわきんたろう作「はじめ小さな草原に」を紹介してみようと思います。これは数年前に一度図書館で借りて読んだことがあります。

 そのときは何となく読み流しましたが、ふとしたときに絵本の内容が過ぎるんですね。「確か赤・青・黄色の人たちが泉を共有できなくて争ってしまう話だったはず。タイトルは....何だったかな?泉?オアシス?」と思い出そうとするたびに、ネットで検索。ついこの「はじめ小さな草原に」のタイトルを忘れてしまうのに、内容だけはいつまでも忘れずに鮮明に覚えていました。

 今日、予約していた絵本を図書館に借りに行きましたが、たまたま絵本の棚で「はじめ小さな草原に」を見つけて借りてくることができ、また読むことができたので....2度目に読んだ私なりの感想をつづってみたいと思います。




はじめ小さな草原に

  • 作: よどがわきんたろう
  • 絵: よどがわきんたろう
  • 出版社: 新風舎
  • 読み聞かせ時間: 7〜8分

はじめ小さな草原に


 「はじめ 小さな草原に、小さな泉が わきました」から物語が始まります。

 雨が降らない日が続き、大地の水が涸れたころ、泉の水はどんどんわいてきました。そんな泉を赤い人間が見つけ、その泉のまわりに村を作りました。村はどんどん大きくなり、赤い人たちはとても幸せでした。

 あるとき、黄色い人間がやってきて、やはりその泉の近くに村を作りました。....そんな黄色い人たちの様子が気になり、赤い人は村と村との間に短い壁を作りました。今度は青い人間たちがやってきて、泉の近くに村を作りました。赤い人間は青い人の様子がとても気になり、赤い人間は村と村との間に長い壁を作りました。

 ....そして、小さな村に小さな心配事が生まれました。

 黄色い人たちも青い人たちも毎日毎日水を使います。そんな様子を見て、赤い人たちは不安でたまりません。日が経つごとに黄色と青い村は大きくなってきます。....そんな様子を見て、赤い人たちは不安で不安でたまらなくなり、気持ちが落ち着かずソワソワして....槍を作り、だんだんと変な顔になっていきました。

 赤い人たちの顔がすっかり変な顔になってしまったある日、赤い人たちは黄色と青の人たちを村に集め「これから泉の水を勝手に使うことは許さんぞ!」と大きな声で叫びました。赤い人たちは鎧で身を包み、槍や刀を手に持っていました。

 そんな赤い人たちに対して黄色と青の人たちがとった行動は....。

 と、結末は想像できるとは思いますが、この後終わりのない争いが続き、赤・黄色・青の人たちはみんな死んでいきます。そして泉だけが残ります。

 「....泉はいったい だれのものだったのでしょう」という問いかけがありますが、本当に誰のものだったのでしょう?....「誰のものでもない」と理屈で分かっていても、仮に私が当事者になってみたら、冷静にそう思うことができるでしょうか?自分の生活がかかってきてしまえば、冷静に考える事なんて....できないと思います。

 この絵本の凄いところは「戦争は良くない」といったことが文字や絵として表現されていないことではないでしょうか?

 武器を持ってお互いが殺し合えば、あとに残るものは....この絵本で表現されているように「人間の作り出した物は何も残らない」と思います。だからこそ、戦争を起こしてはいけないですし、平和のためにひとりひとりが努力していかなければならないのでしょう。

 とはいっても、そんなの綺麗事。変に脅すのは問題ですが、戦争の恐ろしさ、むなしさも伝えていかなければならないと思います。

 どういうキッカケで不安が生まれ、争いが起こり、それが止められないところまで人々を追い詰めていくのか....そんな様子が大人から子どもへのメッセージとしてではなく、この絵本を読んだ人全てに同じメッセージを与えているような気がしました。

 「子ども向けでない絵本」と大人が判断するのもありでしょう。また逆もありでしょう。私は、子どもは子どもなりの正義があると信じています。ですので、機会があったら子どもたちにも読んでもらいたいと思います。

 是非親子でじっくり読んで欲しい絵本だと思いますし、読んだ後、無理にお子さんに「どう思った?」と感想を求めずに、その言葉にならない余韻をかみしめてほしい、そんな風に思いました。